品種登録制度とは?
品種登録制度とは、花や農作物などの植物の新品種を育成した人に独占的な権利を与え、その新品種を保護する制度です。
新品種の育成・開発には多くの技術や知識、長い時間と多額の費用(時には運)が必要ですが、研究開発すれば確実に成果が得られるというものではありません。
ところが、いったん育成された品種については、他人がこれを簡単に増殖することができるというやっかいな問題があります。
そこで、新品種の育成・開発を積極的に奨励するために、育成者の権利を適切に保護する制度を作る必要があったのです。それが種苗法の品種登録制度です。
日本は世界有数の品種登録出願大国で、平成18年の出願件数は欧州、アメリカに次いで世界第3位です。
作物別にみた場合、最も登録が多いのは草花類です。この分野は海外からの出願も多く、日ごろから新品種の開発競争が激しいことがうかがえます。
なお、種苗法で品種登録の対象になるものは植物(藻類、きのこを含む)だけです。動物や魚介類の新品種は登録できません。
品種登録をするメリットは?
品種登録制度によって登録された植物の新品種については「育成者権」が与えられます。この権利は、次のようなメリットがあります。
◆ 登録品種の種苗や収穫物を独占的に利用し、生産・販売を行うことができる。ブランド戦略に有効。
◆ 登録品種を他人に生産する権利を与え、その利用料(いわゆるライセンス料)を受け取ることができる。
◆ 育成者権を他人に譲渡することで譲渡料を受け取ることも。
品種登録をしなくても新品種の生産や販売等をすることはできますが、その場合他人が無断でその品種を栽培・出荷しても法的にやめさせる手段がありません。
育成者権の例外がある?
次に掲げる行為等には例外的に育成者権の効力が及びません。
①新品種の育成その他の試験または研究のためにする品種の利用
(例えば、新品種の育成に使用するため、登録品種の種苗を増殖する等の利用=育種の振興という品種登録制度に合致)
②登録品種の育成方法について特許権が付与されている場合
③販売等により権利が消尽している場合
なお、令和4年(2022年)の法改正により、原則として自家増殖は許諾が必要となりました。
権利の期間は?
育成者権の存続期間は、りんごや松などの果樹・材木・観賞樹(永年性植物)は登録日から30年、それ以外の稲・いちご・野菜などの植物は登録日から25年です。
但し、権利の存続期間内であっても、決められた期間内に登録料を納付しなかったり、品種登録の要件を満たしていなかったことが判明した場合は、品種登録は取消されます。
品種登録の出願方法
品種登録の出願は農林水産大臣宛に出願書類を提出します。
出願書類には、登録を受けたい品種の特性等を記載した説明書や植物体の写真等を添付します。他にも品種に関する説明書などが必要ですので、事前に品種の特性調査やデータ収集、写真などを用意しておきましょう。
出願から品種登録までの期間は約2.5年です。その審査期間中、出願した者に仮保護が与えられ、出願公表後に出願品種を利用した者に対して補償金を請求することができます。
審査は審査官によって行われ、審査の結果、拒絶理由が通知された場合は、その拒絶理由を意見書等で解消できなければ、品種登録はされません。
一方、拒絶理由がない場合(拒絶を解消した場合)は、品種登録され、品種の名称・植物体の特性・登録者の氏名や住所・育成者権の存続期間等が品種登録簿に記載され官報に公示されます。
出願公表や品種登録された場合は、「品種登録ホームページ」でその内容を検索することができます。
海外で品種登録をするには?
日本で開発された品種の海外流出を防止したい場合や、海外で新品種のビジネスを展開したい場合などは、前もって海外でも品種登録することをお勧めします。主要国には日本の種苗法に相当する法律がありますから、これを利用することになります。
例えば、欧州では、欧州共同体植物品種庁(フランス)に出願し登録を受ければ、EC加盟国の全領域で効力を有する育成者権を取得できます。
但し、国によって保護する植物が異なるため、事前にリサーチしておく必要があります。